前回の記事は、クロスセルとは何かをご紹介してきました。今回からは、ツアーやアクティビティなどの「現地体験」におけるクロスセルの使い方を、詳しく解説していきますよ。

この記事では現地体験において、クロスセルをどのように実現していくか、その基本的な考え方や手法をお伝えします。

現地体験の性質を考える

ツアーやアクティビティにおいてもクロスセルは十分獲得可能なのですが、現地体験ならではの特性や性質を考えて対応することが求められます。具体的にどういうことなのか、見ていきましょう。

1度の予約で複数商品の予約は稀

旅を行うためには、様々なことを調べて、事前に予約や手配を行いますよね。やりたいことが明確で、「最初からすべて決まっている」ならいっきにすべて予約する方もいるはずです。

一方で、多くのお客様は旅のパーツパーツを順番に考えながら、段階的に予約や手配を行う傾向があるのです。つまり、1回の予約で複数の商品自体を予約を行うことが自体が稀なのです。

旅の旅程やパーツを順番に決めながら、徐々に必要な予約を行って手配を行うのが一般的になっているといえますよね。ご自身でも思い当たることはありませんか?

リードタイムが影響している

旅の予約や手配の特性は理解できたと思いますが、更に現地体験の特性が加わってきます。別の記事でリードタイムの概念のお伝えしましたが、このリードタイムを考慮する必要があるのです。

旅の目的となるような現地体験に関しては、比較的長いリードタイム(2週間〜1ヶ月以上)前に予約を行われる傾向にあります。逆に空いた時間で参加したいものは、直前でのリードタイム(1週間以内〜2週間)になる傾向です。

このリードタイムを考慮して、どのようにクロスセルを達成すべきか考えましょう

後から追加で予約してもらうのが王道

旅の特性と現地体験の特性を考慮すると、予約時に同時に複数の商品を買ってもらうのはなかなか難しいといえます。そのため、1度予約が完結した後から始まる「追加販売」に力を入れるのが王道になりますよ。

最初の予約が入ったリードタイムの長さによりますが、予約後から始める様々なアプローチで、後から追加で予約してもらう方法を考えましょう。

アプローチ方法

予約後から始まるクロスセルのアプローチですが、基本的な流れはアップセルと同様です。加えて、クロスセルならではのテクニックもあるため、ご紹介していきます。

アップセルと似ている

アプローチの時期やアプローチ方法は、基本的にはアップセルと同様と考えてもらって大丈夫です。メールを使って、リードタイムに応じた自動化された案内が効率的に効果を上げてくれます。

詳しくは以下の記事で紹介していますので、良かったら見てみてください。

別のセクションでわかりやすく表示

クロスセルのおすすめ表示は、アップセルと混ざっても問題ありません。お客様の検討の過程で、アップグレードするのか、それとも別の商品を予約するかは、お客様個々の状況や心理によって異なります。

ここで1つ注意したいのは、アップセルとクロスセルをメール内に分けて分かりやすく表示することです。ここまでがアップグレードの対象、ここからは別の商品の予約ですと示すことで、お客様が混乱しないように工夫しましょう。

お得感があるかどうか

クロスセルならではの特有アプローチとして使いたいのが、「お得感があるかどうか」という点です。つまり割引や特典などのインセンティブなどを使って、もう1つ予約したら特典がありますと訴求することですね。

一般的なマーケティングでは広く使われており、2つ以上で10% OFFや3つ目からは20% OFFなど良く見かけますよね。同じ事業者で2つ以上の予約をすることでお客様にお得感を与えられれば、クロスセルならではのアピールができることになります。

逆にアップセルの場合はこのお得感が注意が必要です。というのも、当初からアップグレードプランを申込んだ方には割引やインセンティブが適用されないため、後から申込んだ方と不平等が生じてしまうからです。

クロスセル上のお得感は、既に通常の予約をしている方限定のため、通常とは違う条件があるといえますよね。

お得感をうまく使う

具体的にどのようにお得感を使うか考えていきましょう。

なお実際のお得度のサイト上やメールへの出し方や、プロモコードを使った管理方法などは別の記事でご紹介予定です。

インセンティブを使って囲い込み

お得感を出すためには、クロスセルに対して「追加の予約をしてもらうためのインセンティブ」を与えることなります。このインセンティブは様々な方法でつけられるため、割引するだけがインセンティブの手法ではないことに注意しましょう。

以下付けられるインセンティブの例です。

  • 割引をする:○○% OFFや○○円引き
  • 特典をつける:○○をプレゼント、○○に自動アップグレード
  • 限定商品が予約できる:予約した人だけが申し込める、予約した人だけに提供

どういうインセンティブが自社の状況に合っているか考え、1つまたは複数のインセンティブを使ってクロスセルに使っていきましょう。決して割引だけが良い手法ではありませんので、ブランドイメージや公平性に注意しながら進めてくださいね。

2つ目以降の予約は優遇する

与えるインセンティブを決めたら、クロスセルへ適用をしていきましょう。実際にどのように行うかというと、最初の予約はインセンティブが適用されないけど、2つ目以降の予約からはインセンティブが適用されるという伝え方です。

魅せ方は状況によって変えることができ、2つ目の予約だとインセンティブがもらえますよ「当初から表示」してお客様にまとめ予約を検討してもらうパターン。予約したお客様だけが知れる限定の情報として、「後からインセンティブがもらえると告知」するパターンです。

どちらのパターンもメリット・デメリットがあるため、自社の状況に応じて使い分けましょう。一般的には割引は事前告知が使いやすく、特典や限定は事後告知の方がよりお得が増しますよ。

割引のステップアップも有効

更にクロスセル向けにお得感を出すこともでき、3つ目以上なら更に○○% OFFなどという「割引のステップアップ」を付けることも有効です。※特典や限定のステップアップはかなりの工夫が必要なため、あまりおすすめはしません。

割引のステップアップ例
※割引が行ったすべてに適用されるのか、該当予約だけ適用されるのかなど様々なパターンが考えられます。

  • 1つの予約:何もなし
  • 2つめの予約:5% OFF
  • 3つめの予約:10% OFF

特に複数日程で滞在するのが多い地域であれば、こういったステップアップを使うことでまとめて予約してもらえる確率が大幅に上がります。OTAや大手予約サイトに負けないような、魅力的な旅のコーディネートも狙えるようになりますよ。

クロスセルの勧め方

お得度を使ってアピールすることは理解できたと思いますので、実際のクロスセルのお客様への勧め方を見ていきましょう。

どういうシチュエーションで使えるか

クロスセルにおいて必ず示したいのが、お客様がどういうシチュエーションなら使えるのかという状況の提示です。お客様から見ると、商品の情報だけでは判断できなかったり、土地勘がないことですぐに理解できないことが往々にしてありますよね?

こういった時に、こういう状況なら参加頂けます、こういう順序なら大丈夫ですと伝えて上げることがとても大事になってくるのです。

以下シチュエーション別の例です、同じ日に参加できるものを説明する時に使えますよ。

  • 参加前にOK:他の商品の終了時間が確実に見えており、かつ予約した商品も決まった時間に開始できる(例:午前参加におすすめ、早く到着する方におすすめ)
  • 参加の後にOK:予約した商品が確実に一定の時間に終わり、次の商品の参加に支障がない(例:午後や夕方参加におすすめ、宿のチェックイン前におすすめ)
  • 近隣で近い:徒歩5分圏内、車で10分圏内など近くて一緒に参加しやすい(例:一緒に良く参加されている、同日に一緒に参加できる)
  • ○○の時に参加可能:特定の条件を満たした人が使えるもの(例:到着日に時間に余裕がある方におすすめ、出発日に時間がある方におすすめ)

お客様に対する利点の提示

どういう状況で利用できるかを提示した後は、なぜそれが良いのかというお客様への利点を示しましょう。この利点を示すことで、クロスセルとして予約する価値が出てきます。

以下に利点の例をあげますので、思い当たるものがあれば是非活用してください。

  • 満足度が高くなる
  • 時間の節約ができる
  • ここでしか予約ができない
  • トータルで安くなる

お客様が違う商品に参加をすることで、通常では体験できないことを示したり、通常では考えられない参加オプションを示して上げることがポイントです。

お客様の心理を活用する

シチュエーションと利点を示したら、最後はクロスセルを予約してもらうためにお客様の心理を活用しましょう。お客様がこれは良さそうだなと思った時に、意思決定の背中を教えてくれる仕組みを使います。

以下のような事実を示すことで、安心してクロスセルの予約が行えるようになりますよ。

  • 一緒によく予約されている
  • 多くの人が一緒に予約している
  • 他の人がおすすめしている(口コミなど)

通常のオンライン販売でもよく使われている手法で、心理学的な効果に着目したマーケティング方法です。※具体的には、バンドワゴン効果・ウィンザー効果・ハロー効果という心理学的な影響があります。

まとめ

旅や現地体験ならではの特性を生かした、クロスセルの使いかたはご理解頂けたでしょうか?リードタイムを考慮すると、後から追加販売というかたちでアプローチするのが基本になります。

このアプローチ時に上手くお得度を出して、かつお客様にクロスセルをしっかり勧めることで、通常は難しいと思われがちな、もう1つの予約獲得を促進できますよ。

実際にクロスセルを行う場合は、手作業でやると想定よりも多くの工数がかかります。こういった業務を効率化するために、マーケティングオートメーション(MA)が活用できますので、次の記事ではMAを使った追加販売の行い方をご紹介します。

NutmegではアップセルやクロスセルようにMAの機能が充実していますので、気なる方は是非詳細を見てみてくださいね。

https://ntmg.jp/functions/single-function-ma.html