今までの記事は、予約単価をアップさせるための別の手段として、追加オプションやプランのアップグレードである「アップセル」を紹介してきました。今回からは同じお客様から複数の予約を獲得する「クロスセル」をご紹介します。一見難しいと思われるかもしれませんが、様々な工夫をすることで十分に対応が可能ですよ。

この記事では予約単価アップを行うための、クロスセルについて解説していきます。

1人1予約しか取れない?

ツアーやアクティビティの事業を営んでいる現地体験事業者の皆さんは、1人のお客様から1つの予約で終わることに慣れているかと思います。確かに同じお客様から同じ日付や近い日付で複数の予約を獲得できることは稀ですよね。

こういった状況は、一定のリピーターさんや、特殊なお客様に限られていると感じていると思います。では本当に1人1予約しか取れないのでしょうか?

お客様の状況を考えると、実はそんなことはないのです。順番に詳しく見ていきたいと思います。

旅の平均:実は2~3予約している

レジャーや日帰り旅行では、1日の限られた時間しかないため、同じ日に複数のツアーやアクティビティなどに参加するのはなかなか難しいといえます。一方で宿泊を伴う旅行はどうでしょうか?

宿泊する日数や日程にもよりますが、観光庁が出している一般的な観光統計を見ると、実は1回の旅行につき2~3つの現地体験に関する予約をしていることが分かります。

また、レジャーや日帰り旅行に関しても、体験の内容次第では1日で2つの別の予約を行うケースもあるのです。1人あたりの観光消費額と、1人あたりの予約単価を比較すると見えてくる事実がありますよ。

詳しくはこちらの観光統計をご覧ください。

別の業種や競合に流れている

なぜ事業者側は、普通は1人のお客様から1つの予約しか来ないのでしょうか?当然ですが、内容が全く同じツアーやアクティビティに参加するお客様はなかなかいませんよね。※趣味がダイビングで連日潜るというような例外はあります。

旅行やレジャーで旅を楽しんでいるお客様は、その土地ならではの楽しみを感じるために、通常は自社とは別の業種や競合に流れていることが多いのです。

特に自社の商品ラインナップが似たようものばっかりになっていると、他の選択肢がありませんよね。ちょっと違った体験をするために、別の事業者で予約を行うのは、普通の感覚だと言えます。

本当にチャンスはないのか?

では現地体験事業者として、本当にチャンスはないのでしょうか?

OTAや旅行会社なら様々な商品ラインナップを持っているため、1社に限らず複数の予約を同じ旅で行うことができます。確かに持っているラインナップは大事なのですが、実は予約前に「どこで検討するか」というポイントが影響しているのです。

お客様は、旅やレジャーの計画時からある程度やりたいものを同時に探していることが多いのです。このようにお客様が探す過程から予約するまでの流れを、カスタマージャーニー」と呼びますが、このジャーニー上で自社のサイトや商品が検討されていれば、十分にチャンスがあるのです。

どういったチャンスがあるかは、これからご紹介していきますよ。なおカスタマージャーニーの詳細は別の記事でご紹介予定です。

複数予約が取れるケース

カスタマージャーニーを元に、実際に複数の予約が取れる可能性があるケースを見ていきましょう。少しでも該当するケースがある場合は、複数予約が取れるチャンスがあるといえます。

半日未満参加のケース

1つの現地体験が「半日未満」で終わる場合は、空いた時間で別の体験に参加することができます。午前中だけで終わるなら、その日の午後や夕方、夜なども可能性は十分ありますよね。

また夕方や夜に参加したものであれば、同じ日の午前中や翌日の午前中も可能性はあります。なぜなら、夕方や夜に参加する = 近隣に宿泊する可能性が高いからです。

夕方や夜の体験が終わった後に自宅まで帰るお客様もいますが、どちらかというと到着日の最初に参加する、もしくは旅行の中日に参加する方が多いはずです。

こういった1つの体験への参加が半日未満であれば、別の空いた時間帯で違う体験を提供することができます。

朝や夜などの指定時間参加のケース

似たようなところで、半日まではいかないけど、特定の時間指定で参加するケースがあります。朝の9:00〜10:00の回に参加する、午後の14:00〜16:00の回で参加するなど、体験の参加が必ず決まった時間に行われるケースです。

こういった場合も、参加する以外の違う時間で別の体験を行うことは十分できますよね。ポイントは「開始時間と終了時間」が明確になっていることです。時間が明らかであれば、体験が終わった後のスケジュールも立てやすくなりますよね。

スケジュールが立てやすいということは、その前後でも何かできることを示しています。

複数日の滞在が多い地域

最後に、旅行の性質上で複数日の滞在が多い地域です。複数日いるということは、その分だけチャンスが広がっていますよね。

どのくらいの日程でお客様が来ているかは、先程ご紹介した観光統計や自治体が発表している独自の統計を見ることで分かってきます。

自社がサービスを提供している地域が、宿泊を伴うような旅行が多い場合は、十分に複数う予約が取れる機会があると考えましょう。

クロスセルとは?

複数予約が取れるケースが分かったと思いますので、実際にどのように対応するか見ていきましょう。マーケティングの用語では「クロスセル」という言葉を使って表しますので、是非この概念に慣れましょう

クロスセルの概念

1人のお客様に2つ以上の予約を行ってもらうことを「クロスセル」といいます。クロスしてセル(売る)という言葉そのままですので、覚えやすいですよね。

このクロスセルの中で必ず覚えたい概念は「追加販売」という部分です。お客様がとある商品を予約しようとした時に、同時または後から「違う商品を合わせて予約」してもらうことがポイントになっています。

ECのAmazonや楽天を使っていると、同じような経験をしたことはありませんか?別の業界も含めてクロスセルを狙うサービスが非常に増えています。なぜこんなにもクロスセルを狙うのか詳しく見ていきましょう。

1から全部探すのは大変

ここでもカスタマージャーニーの登場です。お客様は旅の計画当初に、何をやりたいかある程度事前に調べることが多くなっています。この時に起こるのが「探し疲れ」です。

何でもネットで探せてしまう現代では、様々な情報を探して見て回ることで、一定以上の情報をそれ以上深く見ないようになってしまいます。この探し疲れが嫌で、旅の詳細な計画をあまりしない人もいます。

つまり、お客様はある程度事前に情報を調べると、それ以上新しい情報を見たりせず、今までに見た情報の中で意思決定を行う傾向が出てくるのです。

この特性を生かしたがクロスセルです。1から改めて全部探すのが大変なので、せっかく予約するのであれば、これも一緒にどうですか?とおすすめすることで、お客様に余計な選択の余地を与えずに別の予約を獲得します。

合わせ買いが増えている

お客様もこういったクロスセルのおすすめが来ることに慣れ始めています。先程ご紹介したAmazonや楽天などのECサービスでは日常的に使われていますし、YoutubeやNETFLIXなどの動画配信サービスでも同様です。

クロスセルのおすすめが来ることが予めわかっていれば、お客様も有効活用できます。その結果として、1つのサイトやサービスでの合わせ買いが増えているのです。

観光業界でも同様で、OTAや一部の旅行会社がこういった仕組みを提供しています。同じような仕組みを提供できれば、1つの現地体験事業者でも十分にチャンスはありますよ。

クロスセルを狙うべきケース

クロスセルの意味や価値が理解できたら、実際に現地体験事業者がクロスセルを狙えるケースを見ていきましょう。

一定のラインナップを提供している

自社だけで違う体験を提供できるような一定の商品ラインアップがあれば、十分にクロスセルを狙うことができます。

ツアー会社であれば、以下のようなラインナップがあればクロスセルを検討してみましょう。お客様から見てこれは違うなっと思ってもらえれば大丈夫です。

  • ツアーの行き先や見れる場所が異なる
  • 違う観光施設やアトラクションへの入場を含んでいる
  • ガイドなしの移動サポートを行っている
  • 指定ガイドありの専門ツアーがある

また、アクティビティ会社であれば、以下のようなラインナップがあればクロスセルを検討してみましょう。お客様から見てこれは違うなっと思ってもらえれば大丈夫です。

  • 違うタイプのアクティビティを提供している
  • アクティビティの開催場所が異なる
  • 季節限定の特別アクティビティを行っている

近隣に協力できる会社がいる

自社だけで一定の商品ラインナップを揃えるのが難しい場合は、近隣の違う業種の会社と協力体制を作るのもありです。例えば、ツアー会社であればアクティビティ会社と組んだり、アクティビティ会社間でも違うタイプで協力することでお客様には新鮮に映ります。

自社のサイトでの他社商品販売では直接的に売上を上げることはできませんが、その分販売の手数料をもらうこともできます。逆に他社で販売をしてもらえれば、その分売上を上げることができますよね。

協力できる会社が増えれば増えるほど、その地域内の販売ネットワークが強くなるため、OTAや大手の旅行会社に負けない販売力を持つことができます。相互に総客できる実績が分かれば、お互いに販売手数料を免除したり少額にすることもできますよね。

コラボして販売できる

他社と協力体制がある場合は、お互い商品を1つの体験にした組み込んだパッケージ化もおすすめです。

コラボというかたちで、お客様に見せることで強く訴求できることができます。お客様も当初から選択肢の幅が広がるため、1回の予約で両方の体験サービスを見れくれますよ。

コラボ販売を行う時には、当初からパッケージ化するのではなく、他社の商品を単品で販売してニーズを確かめてからやってみるという選択肢もあります。こういう組み合わせが好まれるから、最初から一緒に販売してみようという具合です。

まとめ

クロスセルのポイントとなる概念や、どういったシチュエーションで使えそうかご紹介してきました。今までは難しいと感じていたかもしれませんが、少しは実現できるイメージがつくようになりましたでしょうか?

近年ではお客様側もこのクロスセルの仕組みを活用するようになっており、観光業界でも大きな期待ができるような環境になってきました。デジタルならではの施策でもあるため、先駆けて取り組むことで実績が作りやすい状況になっていますよ。

今後の記事はクロスセルを具体的にどのように勧めていくのか、MAを使った自動化などを詳しくご紹介していきます。