新型コロナウイルスの影響で現地体験(タビナカ)業界も、他業種同様に変革のタイミングにあります。旅行マーケットが回復し、現地体験への参加者が増えてくるタイミングでは今まで通りの商品に加えて、新しい生活様式を逆手にとった、アイデア商品(体験)が増えていくと予想しています。
現地体験への商品企画のアイデアとして、Nutmeg式の提案をさせていただきますので使えそうなアイデアがあれば是非ご利用ください。
既存商品を見直し、付加価値を加える
新型コロナウイルスの流行前に人気だった現地体験が今後も同じトレンドでヒットを続けてくれるかは現状未知数です。しかし、多くの旅行者の間では健康面での安心を求める動きは確実に増えていくことでしょう。
従来の現地体験の安全性に加えて、スタッフ・お客様双方の健康管理や、地域全体での活動が重要になります。
量から質への変化
今後の現地体験産業は、量から質へ変わっていくでしょう。数年前からお客様の趣向が「どこに行くかよりも何をするか」へ変化してきていると旅行業界では言われていました。モノからコトへの変化、タビナカ志向などと呼ばれることもあります。そんな中で、この新型コロナウイルスの影響が広範囲・超長期的に残るのであれば、それは大人数での旅行に出るスタイルの終わり、つまり団体旅行・MICE・大人数のグループ旅行は減り、個人旅行が主体になる時代が加速していくことになります。
参加人数を増やすことで収益を取ることが難しくなるので、その他の部分で商品価値を上げて売上を確保する必要が出てきます。
商品価値を上げるにはマーケティングから
商品価値を上げるには何よりも、市場やお客様が欲しているサービスについて知らなくてはいけません。先が読みづらい状況ではありますが、旅行者のトレンドを調べ、旅行以外でもヒット商品に何が共通しているのかなどを分析し、そこから現地体験に活かすアイデアを考えていきます。ベースとなる体験商品はもうあるのですから、付加価値としてお客様のニーズを埋められるものには値付けをして、収益率を高めましょう。
ここからは、商品価値を上げる考え方や企画アイデアを中心に、ご紹介します。
販売単価を上げて収益率アップ
アフターコロナでは、参加人数が減ることになるとお話ししました。では、その状況で事業者が売り上げを確保するにはどうすればいいのか、その答えの一つは販売単価を上げることにあります。販売単価を上げる方法についてみていきましょう。
値上げの検討
現地体験の業界は、値下げ・キャンペーンは多いが値上げはしないことは、あまり知られていません。値上げをしたとしても、インフレが激しい国(例えばオーストラリア)の事業者や、5年に一度わずかに数百円だけ上がるという程度なのです。
お客様の趣向がモノからコトへ移りつつある今、コトを取り扱う現地体験事業者が価格を抑える必要はないと考えています。(逆にホテルなどは本質的に「安心して寝れること」がバリューですので、ブランドネームがない限りは価格勝負をせざるを得ないでしょう)
まずは、今自分たちが提供している現地体験商品が安すぎていないかを見直してみることが大切です。
付加価値商品を作る
今の商品に付加価値を加えることができれば、販売価格を上げてもお客様は離れることなく、むしろ新しい顧客を獲得することもできます。
「付加価値ってよく聞くけど、結局何なの?」と思われる方も多いかもしれません。
お客様それぞれ感じ方やニーズが違います。全てのお客様に響く付加価値はないと考えましょう!10%のお客様が買ってくれるかもしれない、現地体験の付加価値サービスはそれくらいの感覚でスタートして、どんどん改善を回していくことが大切です。
付加価値に関してはアフターコロナにもバッチリの具体例をいくつかご案内します。
付加価値アイデア➀ ダイビング業界向け 「交換型マウスピース」サービス
こちらは実際に弊社担当者が企画し、事業者が取り入れ、単価向上に繋がった企画です。
シュノーケルは、下の画像のように口に咥えるマウスピースがついています。スタッフミーティング中で、ひょんなことからシュノーケルは毎回買い替えなくてはいけないのか、という話になり、「このマウスピースは交換できるんですよ」ということを知りました。
もちろんアクティビティの事業者はコロナ発生など関係なく、常に毎回消毒を行ってお客様に提供しています。それは分かっているのですが、消費者の心理として、今は特に他人との接触は避けたい時期です。
それならば、交換型のマウスピースを用意して、予約時に追加オプションでアップセルしたらどうかとなり、試験的に沖縄のダイビングショップ数社でテストマーケティングを行ったところ、全予約の15%ものお客様が有料のマウスピース交換を購入されたのです。
予約単価として、通常プランに比べて参加者1名あたり1,000円の単価上昇に繋がり、見事、現地体験商品としてレギュラー化することができました。購入したマウスピースはお客様が持ち帰り、他の海のアクティビティに参加する際にも流用ができるもの。自分だけの「My マウスピース」でアフターコロナでも安心した気持ちで遊ぶことができるのではないでしょうか。
このようなアイデアはそのままでも流用可能ですし、形を変え、商品企画のヒントとして使えるのではないかと考えています。
付加価値アイデア② ずらし旅
「ずらし旅」という言葉が出てくるようになりました。”定番とは違う場所に行ってみよう”というコンセプトが多いと思うのですが、Nutmegが事業者に提案するずらし旅は、”時間”のずらし旅。
お客様のニーズに応えるためには、定番の観光地を外したり減らしたりということは、望ましくはありません。そこで、混雑する時間帯を避け、旅程の順番を思い切って変えたり、真逆にしてみるのです。通常の旅程とは訪問地を変える、食事内容をグレードアップさせる、など単価アップに繋がるポイントがあると更に良いですね!
混雑時間を回避するのですから、参加者の人数も少数にします。少人数制という付加価値が付くわけですからその分料金に反映させることになります。
これらポイントを理解していただけるようにアピールして、付加価値として定着させられれば、既存商品をベースにしたままの商品展開が可能になります。お客様の反応次第で旅程をどんどん改善していけるのも嬉しいポイントではないでしょうか。
付加価値アイデア③ マニア旅(SIT:Special Interest Tour)
3密対策として、お客様だけの貸切で現地体験を申し込みたい、という需要が増えることは考えられますので、貸切/チャータープランの準備は必須です。ただ、ここまでは多くの事業者も既知のことかと思いますので、もう一歩踏み込んだ商品企画を準備していきましょう。
考え方としては、予算帯の高いお客様をターゲットとした、最高峰&ジャンル特化型の体験を用意するのです。
SIT(Special Interest Tour)というのは特定の目的に絞った旅で、例えば鉄道の旅やワイナリー巡り、などもその一端です。
こういった旅を”マニア旅”とNutmegでは呼ばせていただきます。コアなファンに支えられ、コロナ禍の不調時にもマニア旅は集客ができているところもあります。
(参照記事:旅行業界注目の「マニアックSIT」、鉄道サークル企画の豪華客車貸切ツアーから考える)
予約数としては月に1件にも満たないかもしれませんが、1度あたりの収益性が高く、またリピーターに変えることができれば非常に大きな収益源となります。
もし自社の現地体験に、マニアを引き寄せる要素があれば、そこに超特化した企画を作り、限定ツアーとして開催をしてみてはいかがでしょうか?
過去に担当した事例では、オーストラリア・パースのワイルドフラワーを、野花図鑑も出版している専門家と2泊3日で巡る体験、など高価であってもそのジャンルのコアなファンを集客することに成功しています。
販売価格を調整し、売り上げを平均化
ここまではアフターコロナで団体/グループの利用が少なくなるため、値上げや付加価値による販売単価を上げる対策を紹介しました。
その他にも考えられる方法として、販売価格そのものを調整して1顧客あたりの売上単価を平均化する方法も考えられます。このトピックについても付加価値同様、長くなってしまうため別記事にで詳細をお話ししたいと思います。当記事では考え方にだけ触れさせていただきます。
繁忙期料金の導入
現地体験の業界では、恐らく90%以上の事業者が、1月から12月まで一律価格で販売をしています。残りの10%も、一部繁忙期の更に特定日だけ割増料金がついている具合です。
航空券やホテルの予約サイトを思い浮かべていただきたいのですが、12か月間、プランが同じなら料金は同じでしょうか?需要が多い日は高く、空きが多い日は安くなっていることが多いですよね。
この違いは一言で言えば、システム化されているかいないかの違いでしかありません。現地体験業界はシステム化がまだ進んでおらず、365日需要に応じて価格を変えることはできないのが現状です。
1日単位で料金を変えることはできなくとも、繁忙期をレベル分けして、できる限り販売単価を上げ、閑散期には通常料金に戻すように仕込み、1年を通した販売単価を引き上げることはできるはずです。
過去の傾向を調べたり、ウェブページの料金を書き替える手間はかかってしまうのですが、ひと手間の価値は高いと考えられます。Nutmegシステムでも、1日単位で設定をしなくてはならず、作業時間を取ることにはなってしまいますが、一度設定をすれば後はシステムが管理をしてくれるので、まずは試しに8月、1月など繁忙期だけでも対応してみることをおすすめします。
まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の意識が変わり、団体やグループでの旅行の機会はしばらく減少していく可能性があります。これまで、参加人数を多くとることで成り立っていた事業の場合には、1件あたりの売上高を上げる戦略転換が求められます。
この機会に、今の販売価格が適正なのか、値上げはできないのかを見直し、そこからマーケティング調査を経て新しい付加価値の企画を実施していただきたいと思います。ニーズに応じた提案が行えれば、販売単価を上げることは決して無理なことではありません。
また、手間はかかりますが、繁忙期や混雑時には割増賃金を設定し、閑散期との格差を埋めるアクションも有用です。
割増料金については別記事にてまた詳しく紹介できればと思います。