現地体験には通常、”申込期限”が設けられています。
簡単に説明すると、体験を行う日を基準にして、〇日前の〇時まで受け付けています、という締切日時のことです。申込期限があまりに早いと、それだけ参加対象の幅を狭めることになるので販売機会は少なくなります。その変わり、場合によっては希少性が上がったりして、逆に成功することもあります。

申込期限=リードタイムをどのようにコントロールして、ウェブ販売の効果を最大化するのかをみていきましょう。

近年のリードタイム傾向について

始めに、ここ数年の現地体験産業におけるリードタイムの傾向について触れてみたいと思います。

仮に、旅行業界を以下の区分に分けるとすると、現地体験産業が最もリードタイムが早い傾向にあります。

航空会社
ホテル/旅館
現地体験(観光ツアー、アクティビティなど)

理由の一端として、予約管理が手作業であることが挙げられます。予約が入るまでの流れを大まかに書くとこのようになります。

<現地体験業者の予約~予約完了までの流れ>

  1. お客様や旅行会社などの取引先、電話/FAX/メールで問い合わせを受ける
  2. 空き状況を確認
  3. (予約受付ができる場合)申込書を送る
  4. 入金確認
  5. 予約確定の連絡を入れる
  6. 予約台帳(手書き~データ管理まで様々)

これに対して、航空会社やホテル業は、上記1~6をたった1回の予約プロセスで完了できるため、極端に言えば参加当日の1分前でも予約ができたりします。

なぜこのような違いが生まれるのか、その違いは在庫管理・予約管理システムの普及率にあります。現地体験は資本が少なかったり、大掛かりな在庫管理を従来必要としてこないものでした。その流れのまま現代まで運営が続いているため、在庫・予約管理システムの普及率は欧米圏の同産業と比べても遅れています。

旅に対する意識変化やスマホ普及率でリードタイムが直前化

現地体験産業を除く、旅行業界がデジタル化しつつあることや、スマホの普及率が高まっていることで国内・海外旅行を問わず、旅行者は多くの選択肢を得ることになります。

他にも有給取得率が上がっているとか、モノ→コトへの嗜好変化など、色々と言われてはいますが、旅行業界全体的で見てもリードタイムが直前まで受けられる体制整備は必須事項と言える状況です。

一般的にお客様は、航空券や宿泊先の手配を終えてから現地体験の手配に入ります。
肝心の航空券・宿泊の予約が直前になっていけば、なし崩し的に現地体験もさらに直前になるのです。

今後、現地体験の事業者に求められる戦略は2つあります。

  1. リードタイム短縮を極限まで追い求める
  2. 商品の希少性を高め、リードタイムによらない価値を創出する

ここからは、上記2つの戦略について掘り下げていきます。

リードタイム短縮を極限まで追い求める

”何をやるかは旅先で決める”お客様は今後も増えると仮定します。
恐らく80%以上の現地体験事業者にとって重要になる戦略が、「リードタイム短縮を極限まで追い求める」ことになるでしょう。

これが最も確実で、投資も最低限で済み、リターンの大きい方法だからです。この方法を取るためにやるべきことを紹介します。

在庫管理システムの導入

まっさきに考えるべきは、在庫管理システムの導入です。

在庫管理ができるならば何でも構いません。できれば有形商材よりも、無形商材用の在庫管理システムがおすすめです。
もちろん、特にこだわりがないのであればNutmegの在庫管理システムは無料ですので、一番におすすめさせていただきます。

在庫とリードタイムが連動していれば、直前申し込みは制覇できる

社内体制を整える

在庫管理システムを導入できれば、リードタイム短縮は半分達成したようなもの。

次に、受け入れ側の社内体制の準備です。
理想的なゴールは参加日当日の1時間前までリードタイムを短縮することになります。
そのために必要なアクションは各事業者によってバラバラです。よく聞く課題例から、解決案をいくつかご提案します。

一部旅程の手配が間に合わない

例えば昼食で提供するお弁当箱の注文が前日の12時までだから、それ以降は受けられないというお話を聞いたことがあります。
お客様にとって参加の目的はきっとランチではないと思います。

解決案としては、「ランチなしプラン」を割引価格で商品化しましょう。これなら手配がいらないので当日参加でも受付けできますね!

ガイドの勤務状況によるもの

担当するツアーガイドが、必ず用意できるか分からないという課題もよくお聞きします。体調不良などは避けられない場合もありますので、致し方ありません。ただ、このようなイレギュラーな案件はお客様への個別連絡で解決します。
Nutmegのシステムでは常勤・非常勤ガイドの勤務スケジュール管理もできるようになっており、当日の予約であっても、運営体制を整えていれば、システム上でお客様をガイドにアサインし、ガイドはアサイン表に沿ってツアーを催行することもできます。当日予約のお客様の対応フローさえガイドとしっかり話し合っておけば、ガイドの体調不良などの懸念は考える必要はありません。

取引先へのアロットメントとして確保している

旅行会社等と契約していて、アロットメント(提携先用の座席枠)を確保している場合があります。アロットメントは埋まらなければ基本的には負債と同じです。買取保証はほぼされないでしょう。アロットメント契約自体を避けることをおすすめしますが、どうしても契約を避けられないならば、リリース日を催行日5日前までにするなど、自社集客でまかなえるように交渉しましょう。
繁忙期と閑散期でリリース日を変えるのも方法の一つ。具体的には、繁忙期は3日前まで、閑散期は5日前まで、というように細かく調整しておけば、機会損失を多少なりとも防げるはずです。

現地集合プランを用意する

在庫管理システムと社内体制が整えば、当日予約受付のスタートまであと一歩です。
陶芸教室のようなお客様が自ら店舗に向う事業を除き、多くの観光ツアーでは送迎手配がリードタイム短縮のボトルネックになります。

ならば思い切って、送迎手配をしないことも打ち手です。

当日予約は〇〇に集合」というように一本化しておけば、事業者は送迎手配をする必要がなくなります。お客様視点でも”予約したのに送迎の連絡がなくて不安”になることもありません。

Nutmegシステムを使っている場合ですが、ガイドは当日のマニフェスト(参加者リスト)をダウンロードして、当日予約者を指定集合場所へまとめて迎えに行くだけですので、運用面でも効率的です。

これは一例ですが、ボトルネックを解決する方法も、発想を変えれば解決できるかもしれませんね!

商品の希少性を高め、リードタイムによらない価値を創出する

現地体験に希少性があったり、限定的な要素があると、リードタイムによる影響をあまり受けません。需要に対して供給が少なく販売側優位で進められるためです。

自社だけの”権利”があると強い

例えば、静岡県の神子元島では、夏になるとハンマーヘッドシャーク(シュモクザメ)の群れに遭遇できることがあります。これを狙ってあらゆる所からダイバーがやってくるのですが、ダイビングは基本的に個人ではできません。(ルール上できるのですが現実的には難しい)
神子元島でダイビングツアーを実施している会社はごく僅か。供給側にパワーバランスがあるパターンですね。この状態では、リードタイム短縮は必要がなく、数か月前に満席状態になるため、先々の売上も見越すことができます。※天候リスクなどはあり
言い換えると、既得権益が存在する場合には、リードタイムは自ずと前倒しになります。

体験談(レビュー)の積み上げ

商品に希少性を出すためには、”他の現地体験では替えが効かない”とお客様に思ってもらえるサービスである必要があります。

今は消費者自身の考えをSNSで発信したり、経験を体験談や口コミで投稿する現代です。昔のようにサービス価値を広告で伝えきることはできないと考えています。

既得権益などがなくても、同業他社に比べて高い評価を消費者から得て、体験談などにより見える化すると何にも代えがたい武器となります。

体験談で勝つためには以下目標値を達成できれば、希少性としての付加価値が生まれると思います。

・同じレビューサイトでの、同業者の平均レビュー点数を越え、地域でNo.1になる
・No.1を常時維持する
・体験談投稿数は50件以上を目指す
・毎月1回は必ず最新の投稿がもらえるようにする

・すべての体験談に対して返信を行う

販売チャネルを絞る

これはある程度自社の希少性が確立できてからの提案です。
口コミでの集客ができるステージになってきたら、販売チャネルを広げるのではなく、絞ることでより希少性を高めることができます。

人間は”なかなか売っていない”からこそ欲しくなるものですので、そういった心理も利用すると良いかと思います。

まとめ

現時点では、ツアーやアクティビティの業界においてリードタイムは航空・ホテル業界ほどの間際化は行われていません。しかし、時代と共に旅行関連の予約は必ずデジタル化が進みます。

早くデジタル化を推進して、リードタイム短縮に向けて対策を考えていくことで、時代の変化に対応した成長ができると考えています。
また、リードタイムの短縮が一般的な流れですが、商品内容によっては、希少性があり、デジタル化の影響を受けない商品もあるでしょう。そのような商品を生み出すためにやるべきことを考え、アクションを取り続けていくことが大切です。