割増という言葉にはどちらかというとネガティブなイメージが付いていると感じています。
様々なモノの消費者として日常的に割増という言葉は滅多に見ることはありませんし、日用品や飲食店で値上げがあると残念な気持ちにまでなったりします。

しかし、現地体験においては、割増を上手に使いこなすことできれば利益率が格段に上昇します。決して難しいことではないので、自分のビジネスで戦略として使うことができないか、この記事を読んで考えていただければと思います。

割増の効果について知ろう

割増について

「割増」を戦略に組み込んでいる現地体験事業者はほとんどいません。しかし、旅行業界を見渡すと、実はかなり一般的な戦略なのです。

例えば、航空会社です。エコノミークラスでの場合は、正規料金であるYクラスから格安の座席まで値段幅が広く取られていて、出発日や空席率によって価格が変動します。同じ席番号の座席でも予約するタイミングによって1席の価値が変わり、割引にも割増にもなるのです。

飛行機でいえば、非常口付近の座席が割増料金設定している航空会社も珍しくはありません。足が伸ばせるなどメリットが大きいため、他のエコノミー座席よりも価格を上げています。

ホテル・旅館も航空業界と変わりません。飛行機よりも、ホテルや旅館の方がプランや付加価値が豊富にありますので複雑ですが、やはり同じプランの部屋でもタイミングが違えば価格は異なります

もうお分かりかもしれません。割増とは予約タイミングにより価格差をつけ、需要と供給のバランスを取る戦略です。
ただ、ツアー・アクティビティ業界は、航空・ホテル業界と比べても同じ旅行業界なのにシステムのレベルや組織力に雲泥の差があります。早割や割増といった顧客(旅行者)の予約タイミングに合わせた価格戦略ができない一番の原因はシステム化が進んでいないことに原因があるのは間違いありません。

1席の価値は人それぞれ違うのに何故同じ価格で販売するのか?

これは早割の記事でも書いたのですが、顧客(旅行者)にとって1席の価値とは等しくありません。それにも関わらず、8~9割のツアー・アクティビティ事業者様は1月1日から12月31日まで同じ価格で座席を販売しています。


何か月も前に入念に旅の計画を立てている旅行者は、行きたい観光地に自分で行くのか、ツアーを利用するのかを考え、ツアーならばどの会社・サイトが総合的に良いのか調べて予約をします。多くの場合、値段が安いものが先に売れていきます。
反対に、急遽旅行に行くことになった場合には、自分たちの席を確保することが優先になりますので、多少高くても仕方ないという心理が働きます。

同じ旅行者であっても予約のタイミングによって予算の許容範囲が変わるのです。ここには収入の差は関係ありません。逆にいえば、まだまだ追加課金ができる余地が残されていると言えます!

割増効果①利益率を上げる

割増価格は当然利益率が上がります。割増価格設定にもよりますが、おおむね10~15%ほどは通常価格に上乗せをしても販売できるのでその分だけ1予約あたりの単価と収益率が上がります。

割増効果②お客様の品質を上げる

ツアー・アクティビティの価格と旅行者の品質は比例します。ここで言う”品質”とは、クレームが多い/少ない、リピーターになる存在顧客である/ならないという意味です。

安い商品と高い商品では、安い商品の方がクレーム数が多くなる傾向があります。

1席あたりの販売単価をより高くすることができるのに、「なんとなく」で通年価格を適用して販売しているためにクレームまで増やしていたら本当にもったいなく感じないでしょうか?

クレームの多いお客様は、実際のツアー中にも他のお客様にご迷惑をかけることも多いですが、高価格でも予約をするお客様は比較的混載ツアーの中でも協調性を持って参加いただけます。
ツアー・アクティビティを担当するガイドにとっても、一緒に参加する他の旅行者にとっても割増価格で集客することは顧客満足度の観点からもメリットがあると言えます。

割増効果③お客様ひとりひとりに対して丁寧に対応できる

繁忙期の混載ツアーやアクティビティは、1グループあたりの参加人数が増えるため普段よりもガイドとお客様の距離が遠くなってしまいます。閑散期にはお客様のニーズに合わせてガイディングができていても、参加人数が多いとマニュアル的な対応になってしまうというのはよくある話です。

割増料金設定を行うと、予約数は下がります。当然参加者数も減りますが、その分高品質なお客様に対して、丁寧にガイディングを行う時間が増え、結果的にリピーターになってくれるなどの利点が生まれます。
減ってしまった予約の分、売上は下がることもありますが、利益率は高まっているため、多少の損失分は吸収ができているはずです。

予約数に影響する割増率はトライ&エラーで見つけよう

割増によって収益率が15%増えても、予約数が30%減ってしまっては看過できないと感じる事業者もいらっしゃると思います。よりお客様へ提供するサービス(ガイディング)を大切にするかどうかという話だとは思いますが、それでも予約数は減らしたくないと考えるならば、予約数に影響が出る割増率を地道に試しながら調べていくしかありません。

例えば、10%の割増では予約数への影響は前年-5%だが、15%にしたら‐13%になった、つまり10%を越えるとお客様は買い控えしてしまうようだ、というように商品や会社ごとに特徴が出ることがあります。

割増率の調整が上手くできるようになると、予約数は減らさずに収益率を上げるという結果を得ることもできるでしょう。
ただ、「高品質のお客様を獲得する」ことまでは難しいでしょう。何を得たいかで戦略の方向性は変わります。

割増の実施タイミング

基本は繁忙期に実施する

割増は基本的に参加人数が増える時期に行います
一般的には夏休みなどの休暇の時期ですね!こういった時期は需要>供給になりますので、割増料金にすることで、需要=供給になるようにバランスを取るのです。

ただし事業者の地域や商品内容によっては必ずしも一般的な長期休みに合わせなくても良い場合もあります。たとえばクジラを見る「ホエールウォッチング」などは実施時期が決まっています。過去のデータから遭遇率が高い週には予約が集中しますので、そのようなタイミングに合わせて割増料金でコントロールをするのも打ち手です。

業務効率の改善も見込める

需要が供給を上回っている時期には、受付できる人数以上の予約や問い合わせが入ってきてしまいます。予約が受けれられないのに、連絡だけ対応していては事業者の生産性は下がります。割増料金の設定をしておくと、不必要な需要を抑えることができますので業務効率も上がりますよ!

割増設定方法

プロモーションから設定

Nutmegのグループ割設定方法をご紹介します。
プロモーション(キャンペーン)設定は、管理画面左のメニューバーにある「プロモーション」を選択することから始まります。

プロモーションを選んだら、プロモーションタイプ「割増」を選択します。

適用される日時範囲、課金額を設定する

割増を選んだら、「適用される日付の範囲」と「課金額または課金率」を設定します。

ここまで設定をしたら、保存を行い設定は完了します

Nutmegで作った商品ページでの見た目はこのようになります(下図)。

編集と一時停止・中止設定

設定したプロモーションを編集する際は、えんぴつマークをクリックして編集画面に移動します。

プロモーションを一時停止または中止する際には、ステータスから選択して保存するだけです。一時停止/中止したプロモーションは再開することもできます。

割増の応用テクニック

週ごとに割増料金を設定する

夏の繁忙期では1週目と2週目では客入りがかなり違います。同じ8月でも週によって価格を変えたいという要望もあるでしょう。こういった場合には上記で説明したプロモーション設定ではなく、「価格」から設定を行います

価格設定画面で期間を区切る

下の図では、2021/4/1~2021/7/31までは大人1名あたりの料金は3,000円です。
ここに、8/1~8/10までは4,000円の割増料金を設定してみましょう。

新しい期間「8/1~8/10」を追加したのが下図です。
割増料金を直接入力します。
もし8/11以降をさらに別料金を設定したければ、ここまでの設定を繰り返すだけです。

予約画面を見てみよう

「価格」で期間を区切り、それぞれ料金を設定した結果を実際の予約画面で確認します。

料金がしっかりと期間によって変わっているのが分かりますね!
プロモーション設定は簡単に設定ができるのが利点ですが、月ごと・週ごと・日ごとで価格を調整する際には、価格設定で行うのがおすすめです。

まとめ

割増は現地体験では使われる機会は限定的かもしれません。しかし、海外の催行会社の間ではHoliday priceとして割増設定を設ける会社も増えてきています。
現地体験の会社を何年も運営していると、季節ごとのお客様の予約推移は把握していると思います。予約が集中すると、ツアー内容が薄れてしまうなどお客様満足度へ影響することも。
割増料金を設定し、需要と供給のバランスを上手く取ることで、収益率の改善やお客様に届ける体験の品質も上げることができます。
割増は需要が高い時期にへの一次的な値上げのため、基本料金の値上げに比べたら実施ハードルも低いはず。お客様により高品質なサービスを楽しんでもらうためにも、繁忙期価格の導入から検討をしてみましょう!